はじめまして!M&A勉強中のコンサルタントのYUTAKAです。
私はこれまで、新エネルギー関連アセットのM&Aに携わってきましたが、企業間のM&Aにも興味を持ち、日々勉強中です。
最近、日本企業を買収したいという海外企業からの相談を受け、クロスボーダー案件の難しさや、買い手主導のM&Aの進め方について、M&AアドバイザーのMISAさんに相談しました。今回は、その内容やディスカッションを通して学んだ点をシェアしていきたいと思います。
文化的ハードルと売主社長・従業員の心理
まず、売手の立場にあって、日本企業が海外企業に買収される際にどのような文化的ハードルがあるのかという点や、売手側の社長や従業員の心理がどうなるのかついて考えました。
例えば東南アジアの企業が日本の製造業の買い手となるケースでは、日本人の売主自身が海外企業からの買収に対する抵抗感がある場合が多いことが、特に問題になる可能性があると考えられます。買手としては、日本企業の技術力や製品力を生かして海外の販売ルートで展開したいという狙いをもってM&Aを目指すわけですから、それを叶えるためには、売主や従業員に対しては期待とリスペクトを持って接することが重要です。
また、M&Aの協議を進める当初から、「仮に事業を継承できたとしたら、買手と協力して事業の海外展開を加速させることができる」など、傘下(グループ企業)になることの具体的なメリットを売主へ提示できるように用意しておくと良いでしょう。
マイナーシェア取得の戦略
売手企業の株式を、まずはマイナーシェアのみを取得する戦略はどうか?という点についても議論しました。この方法は少し資本提携を結ぶだけなので、悪く言えば「ちょっとツバをつけておいて後でM&A(メジャーシェアの保有)を考えよう」という事業の価値もリスクもすべてを継承する覚悟を欠いた買収提案に見える可能性があります。(ケースにも寄りますが)基本的には、過半数を取得し、事業リスク全体や資金繰りも含めて引き継ぐという覚悟を示すことが望ましいことが多いでしょう。
ただし、両者が合意するのであれば、有効な手段にもなり得るとは考えられます。例えば、売手の経営者が若く、まだまだ自身で経営を続けたいけれども、大きな資本力や販売力を持つ企業との提携によって事業成長を躍進させられるケースなどが当てはまるでしょう。買手としても、既存の経営者がしばらくは事業をドライブしてくれるのであれば非常に心強いですし、将来的にM&Aをするまでの間に経営主導を交代するまえに、売主とともに次の戦略を考える時間を得ることもできます。
その後、両社が合意するのであれば段階的に保有比率を引き上げ、過半数ないしは全数の取得を目指すという戦略も有効になり得ます。
また、ケースによっては売主が継続的に「会長」「顧問」のような形で経営アドバイスをする立場として残る場合、株式のシェアをほんの一部だけ保有し続けるパターンもたまに見ることがあります。
MISA: YUTAKAさんから相談を受けた際に、マイナー投資が中途半端に映る可能性があるというお話をしましたが、ベンチャー投資として、マイナー投資先をたくさん保有している大手企業はたくさんあります。ただし、その多くは売主側が「資金調達」目的で資本を受け入れているケースが多いと思います。
後継者不在の問題を抱える売主企業のケースでは、「マイナー投資から始めて資本提携し、徐々に経営権を…」というケースはほぼ無いでしょう。以前、事業承継を成約した売主社長が「業務提携なんて、いざ経営が厳しくなったら自分の会社が可愛いのだから提携先なんて後回しにされて当然。でも資本を投下して完全に自社の所有になる(100%株式保有する)ということは、経営がどんなに厳しくてもどうにかしないといけないという覚悟が伴うモノ。その対価を受け取る代わりとして、自分が身を引くんだ。本当にこの会社の将来を面倒みてくれるには、単なる提携なんかじゃダメなんだ。」と仰っていたことが非常に印象的でした。
M&Aはお金と引き換えに覚悟が伴うものです。その買手の覚悟と本気度が売主に伝わることで、「ともに発展していこう」という前向きな気持ちを共有でき、M&A協議が進められるかもしれませんね。
ディスカッションは、PART2に続きます。