こんにちは!M&A勉強中のコンサルタント、YUTAKAです。
PART1に続き、海外企業が日本企業をM&Aするケースに関してMISAさんと相談した内容、学んだことをお届けしていきたいと思います。
事業譲渡vs会社分割
今回、私が関わっている海外企業がM&Aしたいと考えている対象となる業界は、いくつもの異なる事業を行っている会社が多く、その中でも特定の1つの事業のみを買収したいという可能性が高いと考えていました。このようなケースでは、PMIや従業員心理への配慮から、「事業譲渡よりも会社分割をしてから買収したほうがいいのではないか」と考え、この点についてもMISAさんに相談させていただきました。
私は会社分割の手続きにかかるコスト面が気がかりでしたが、例えば新設分割であれば主な必要コストは登記費用や司法書士への手続き報酬程度で、基本的には事業資産の移動も比較的シンプルに行えるということがわかりました(司法書士に分割に係る契約書や法的書面を用意してもらうための報酬は司法書士によって変わります)。
また、分割した新設企業を買収するスキームは、簿外債務の継承などのリスクが抑えられ、買収対象の資産が明確化されるので、買い手にとっては非常に進めやすい案件となる可能性があるという、メリットを知りました。この点に関しては、新エネルギーのアセット買収時に新設の特別目的会社を使用することと共通点があります。
一方で、新設分割のM&Aに不動産が絡む場合は、不動産所有権の移転にかかわる税金やコストなど、税理士などと相談しながら、異なるスキームで比較検討すべきです。また、不動産取得税を回避できる適格分割にあたる場合、大幅な節税できる分、高額な報酬を請求するコンサルタントも存在するようなので、専門家の見極めは注意が必要です。
買い手主導での買収先探し
買い手主導で初期的に対象会社に対して売却に興味があるかどうかをアプローチすることを「タッピング」といいます。しかし、買い手主導で対象企業にアプローチし、売却を検討するという相手を見つけることはかなり難しいことのようです。
多くのM&A仲介会社の中には、架空の買い手をほのめかして売却候補企業を開拓し、売却案件を発掘しようとする業者が存在するため、そういったM&A仲介会社の営業活動と紛れてしまわないためにも、買い手主導のアプローチの際には、企業名を開示したほうが有効となる可能性は高いでしょう。
ただ、業界内でM&A検討の噂が広がるなどのリスクは存在する上に、タッピングによって売却案件が顕在化する可能性はなかなか低いため、初期段階では買手の企業名は開示しないのが基本原則です。
タッピング戦略の難しさを鑑み、最初は協業を持ちかけて接触したり、実際に協業してみたりなど、最初から買収を打診しない方法であれば、買い手の名前を開示してアプローチをするのも有効な方法となり得るかもしれません。
まとめ
今回の相談を通じて、M&Aにおける多くの新たな知見を得ることができました。特に、少数権益取得の際のデメリットや、会社分割の現場でのリアルな情報については、事前には全く考えになかったことで、非常に勉強になりました。特に印象的だったのは、売手が売りやすいスキームを考えることの重要性です。このようなアプローチは、買い手主導のクロスボーダーM&Aにおいては、双方にとってより良い結果をもたらす可能性があると確信しています。
ちなみに、アメリカでは「新たな機会を模索したい」「家族との時間を優先したい」など、ビジネスに一旦区切りをつけるEXIT目的での売却が多いため、日本人と比較する限り海外企業からの買収に抵抗がある人は少ない印象であるとMISAさんは言っていました。
最近毎日のように新聞を賑わせている、日鉄によるUSスチールの買収提案劇を見ていると、アメリカでも海外から、特にアジアからの買収には抵抗が強いのかと考えていましたが、どうやらそうではないようです。
クロスボーダーM&Aは、単にビジネスモデルや財務面だけでなく、文化的な側面や心理的なバリアを考慮する必要がある複雑なプロセスです。しかし、それらのハードルを乗り越えた時、新たな市場での成長機会やビジネスのシナジーを創出することが可能になります。買い手主導で進める場合は特に、買収先との信頼関係の構築や、相手の事情を考慮した戦略の検討が必要不可欠です。
今回の相談を通じて得たられた知見は、私の今後のM&Aに関する取り組みにおいて大いに役立つでしょう。M&Aはリスクを伴いますが、それを管理し、戦略的に進めることで、大きな価値を生み出すことができます。これからも学びを深め、より良いM&Aの実現を目指していきたいと思います。
MISA: YUTAKAさん、この度はご相談ありがとうございました!タッピングは、経験上めちゃくちゃ難しいんですよね・・・(苦笑)。これは、不動産デベロッパーが、開発プロジェクトのためにご高齢の地主に何度も足を運び、長年保有している土地を売ってくれるように懇願するのとよく似ています(いや、それより難しいかも?)。
ただ、グローバルの視点で事業成長するために、M&Aを検討することは素晴らしい経営戦略だと思います。日本の高品質な技術力や人材は海外で通用しますし、いまの日本の後継者不在問題を解消するひとつの解決策として、海外企業の傘下となって大きく成長することは非常に良い方策だと感じます。
言語の壁やカルチャーの壁は多いにありますが、その壁を乗り越えるところに面白みがあったり、企業同士の良い「化学反応」が生まれたりするもの。今回は買手側の視点でのご相談をいただき、私もたくさんの気づきを得ることができました。YUTAKAさん、また今後もM&A戦略を話し合っていきましょう!
そして、M&Aに関するご相談はいつでも受け付けていますので、ぜひこちらを読んでご関心をいただいた方、お問合せお待ちしています!^^