こんにちは!M&A勉強中のコンサルタントのYUTAKAです。前回はクロスボーダーの案件に関してご紹介させていただきました。今回は引き続き、同じ案件で買収対象候補として検討している企業に対する簡単な財務分析について、シェアしたいと思います。
ここでは、私がFAとして関わっている買い手企業をA社とし、今回検討する買収対象候補企業をB社とし、B社の財務状況、市場でのポジション、および買収後のシナジー効果などについて、考えていきたいと思います。まだ検討初期段階ですので、あくまで入手済みの限られた財務情報等に基づいた考察となりますが、M&Aを行うにあたってのポイントをおさえられたらと思っています。なお、財務情報の数値は近似値としています。
財務データの概観は?
a. 売上高および利益について
年度 | N-4期目 | N-3期目 | N-2期目 | N-1期目 | N期目 |
売上高 | 1,700,000 | 1,500,000 | 1,500,000 | 1,300,000 | 1,000,000 |
経常利益 | 110,000 | 160,000 | 60,000 | 55,000 | 60,000 |
売上高経常利益率 | 6.5% | 10.7% | 4.0% | 4.2% | 6.0% |
純利益 | 60,000 | 100,000 | 55,000 | 45,000 | 45,000 |
売上高純利益率 | 3.5% | 6.7% | 3.7% | 3.5% | 4.5% |
まずは収益性についてです。上記の財務情報を見ると、過去5年間で売上が顕著に減少しています。この減少傾向は、一般的には、B社の市場での競争力が低下している可能性や、市場そのものが縮小しているもしくは競争が激化している可能性を示唆しています。
B社の業界は、確かに市場が縮小傾向にあり、市場におけるプレイヤー数も減少傾向にありますが、利益率は比較的安定していることから、値引き競争などには陥っていないと推察され、競争状況よりも市場の規模そのものの影響が大きいのではないかと考えられます。また、B社の事業は大きく分けて新規建設とアフターサービス(メンテナンス、部品販売など)に分類でき、景気等の市場環境により、売上高に大きく貢献する新規建設の案件が減少している可能性も考えられます。この点に関しては、さらに深く検討する際に、同業他社との比較や実際にB社が獲得している案件の分類について把握することが有効と考えられます。
MISA: 売上が減少傾向という事象について、YUTAKAさんの仰る通り①市場自体の縮小可能性、②競合企業の状況、③売上構成(新規建設かアフターサービスか)の要因を調査することは非常に重要ですね!
もうすこし詳しく調査できるのだとしたら、まず私がアドバイザーとして調査するのは、「対象会社の顧客はだれか?」という観点です。とくに中小企業の場合、売上が得意先1社に大きく依存してしまっていて、得意先の業績や発注量によって対象会社の業績が大きく左右されるということが大いにあり得ます。
もしも、B社が特定顧客に依存している場合には、A社のリソースを活用することで「M&A後に特定顧客への依存体質から脱却できるかどうか?」と早い段階から考察していくことも重要です。
もしも、B社が特定顧客に依存していないのだとすれば、「新規の売上獲得領域を見つけて売上減少を補填できる対策はあるのか?」と考察していくことになると思います。
その際には、新規建設とアフターサービスのどちらが利益率が高いのかを分析し、どの分野に注力していくことが収益性向上に寄与するのかも検討が必要ですね。
得意先の調査については、調査会社経由でも情報収集できる部分が大きいため、有効活用すると良いでしょう。
PART2へ続きます。