1. 一言で説明
338(h)(10)選択は、株式を買って会社を取得する取引でも、税務上は資産を買ったのと同じ扱いにできる米国の制度です。買い手側は将来の節税(減価償却など)を狙える一方、売り手側の税負担が増えることもあります。
2. 詳しい解説
通常、米国で「株式取得(Stock deal)」をすると、買い手は会社の株主になるだけで、会社が持つ設備・顧客関係・のれん等の“資産の簿価”は原則据え置かれます。ここで338(h)(10)選択を行うと、税務上は会社がいったん資産を時価で売却し、買い手がその資産を買い直したように扱われ、資産の取得価額が“時価にステップアップ”します。その結果、買い手はのれん等の償却(通常15年)や設備の減価償却を増やせる可能性があります。日本のM&Aでは「株式=株式」の発想が強い一方、米国は税務選択で実質を組み替える設計がある点が大きな違いです。制度の前提や適格要件はIRSの案内も参照してください(IRS)。
3. テキサスM&Aでの具体例や注意点
たとえばダラス近郊の製造業を日本企業(または日本人オーナーの米国法人)が株式で買収するケース。現場は「許認可・契約を引き継ぎやすいから株式取得が良い」となりがちですが、買い手が将来の米国課税所得を抑えたい場合、338(h)(10)で設備・顧客関連・のれんの税務償却を厚くできる余地があります。一方で、売り手(特にS corporation株主など)は資産売却扱いになることで税負担が増え、売買価格や補償(税負担の調整)交渉が必須になります。またテキサスは州所得税がない一方、連邦税が主戦場になるため、連邦での税務効果の試算がそのまま投資判断に直結しやすいのも特徴です。資産配分(Form 8594相当の考え方)や雇用・契約の引継ぎも絡むため、早い段階でM&Aと税務の両面から設計しましょう。米国での小規模企業買収の基礎はSBAの情報も参考になります(U.S. Small Business Administration)。
4. まとめ
338(h)(10)選択は、株式取得の手続きメリットを保ちつつ、税務上は資産取得の節税効果を狙える強力な選択肢です。買い手のメリットが大きい分、売り手側の税負担とのバランスを数字で詰めることが成功の鍵になります。
5. コメント
私たちがテキサスで日本人オーナーの買収案件を支援するとき、LOI段階では「株式で買う」だけで話が進み、後から税務面で“もったいない”設計になっていることが少なくありません。実務では、338(h)(10)を検討するなら売り手の法人形態(S/C)と株主構成を最初に確認し、買い手の将来利益計画とセットでステップアップ価値を試算します。数字が見えると、価格調整や税負担の補償も冷静に落とし込めるので、初期段階から税務アドバイザーを交えて進めるのがおすすめです。
※ この記事は一般的な情報提供を目的としており、法的・税務的なアドバイスではありません。詳しくは専門家にご相談ください。
