PART1に引き続き、シリアルアントレプレナーのKaleoにお話をお聞きします。
MISA: 癌の治療薬開発の新規事業って、聞いただけで多額のお金がかかりそうですが・・・
ええ、その通りです。ですが、私が興味を持っていた癌の治療薬は具体的に申し上げますと「多発性筋腫」用の薬でした。多発性筋腫は、血漿がんです。血液の中の癌ですね。
その当時、この病気のための薬は1種類しかありませんでした。従って、多発性筋腫を発症したら治療法が一つしかなかったのです。その1つの治療法が効かなかったとすると、「残念ながら・・・」となってしまう。その1つの薬というのは、日本の武田薬品が開発したものでした。
すなわち、確かにお金はかかるにしても、ものすごく大きなチャンスを感じたんですよね。
MISA: なるほど、1つしかなかったのですね。それで、自分が入り込む隙があると考えたわけですね。
そうです。市場参入できる大きなスペースをみつけたので、挑戦してみたのです。
ですが、ある程度の前進はしたのですが、科学的な改良はかなり困難を伴うものでした。私たちにもやり遂げることはできたと思うのですが…。
仰る通り、予想以上の多額の予算と、予想以上の時間が必要だったため、ビジネスパートナーとともに「別の事業を始めよう」と考えて、今度はテキサス州でケミカル製品の会社を起こすことにしました。
結論からいうと、この新規ビジネスはゼロから始めて5年ほどして、会社を売却しました。
まずケミカル製品の会社を2019年に売却した際には、同時に輸送会社も別で保有していたのですが、その輸送会社の方は売却しませんでした。
そのため、その後5年間はその輸送会社を成長させてきました。そして現在は、その輸送会社も売却し引退しています。
総じて、私がこれまでに携わってきたビジネスに共通していると言えることは、化学薬品関連のビジネスですね。
MISA: ここダラスで立ち上げたそのケミカル製品の会社についてもう少し詳しく教えてもらえますか?
まず先ほど話した新規事業を検討する際の2つのポイントは:
- 大きな市場拡大見込みがあるビジネスかどうか
- 誰もが必要とする、そもそも市場が大きいビジネスかどうか でしたね。
「アスファルト・リリース・エージェント(アスファルト除去薬剤)」なるものがあります。私のハワイの実家の家業は、道路建設業だったので、以前から道路建設業については詳しかったんです。
アスファルトというのはとてもネバつきがあるため、以前からこのアスファルト除去については需要があることを知っていたんですよね。
アメリカにはEPA (連邦環境保護庁)とDOT (運輸省)という2つの機関があるのですが、ここでは環境に流れ出す汚染化学物質を規制しています。
私は、一定の需要が見込めることを知っていたので、ダンプカー用の環境にやさしいアスファルト除去薬剤を開発しました。アスファルトがダンプカーの中に搭載されると、まず、冷却することが必要になります。フライパンにオイルを引くのと同じようなものです。
私は自動貯蔵タンクを作り、全国にタンクを提供しました。そしてダンプトラックが自動的に除去剤を塗布できるスプレーシステムを作りました。 ドライバーはトラックから降りていていいのです。全部、私1人で開発したんです。
タンクの在庫が20%になると、私の輸送会社のトラックを送って在庫を補充する仕組みでした。それを自動的に行うことができるので、素晴らしいネットワークを構築できたと思います。全米のどの州でも使える唯一の仕組みを作成したのです。他にもいくつか特定の州でだけ使えるシステムはありましたが、全米で使えるのは私が開発したものだけでした。ですから、販売し全国へ拡大するのは簡単でしたね。
環境にやさしい薬剤をいくつか作り、ミッションラインに売ってしまいました。
MISA: 先見の明と、製品技術の開発力。すごいとしか言いようがないですね…。
そして、輸送会社も最近売却されたのですよね?
ええ、そうです。私が薬品会社を売却した当時は、輸送会社で保有するトラックはわずか3台でした。ですが、今現在は25台くらい所有しています。顧客は、食材を扱う大企業が多く、植物加工を行うカーギルやジェネラルミルズ、全米最大のエタノール製造を行っているポーイ・ニュートリシャン社、その他いろいろありますが、我が社は危険物でない化学薬品や食材を各地に輸送しています。
MISA: その会社はいつ売却したのですか?最近ですか?
今年の2月です。その売却準備を始めたのは10月でした。戦略的買収者(ストラテジックインベスター)がいたのですが、最終的には、ビジネスパートナーが会社に残りたいとのことでしたので、彼に会社を売りました。
MISA: その方は一部を保有する共同経営者だったのですか?
そうです。私の所有分を彼に売りました。
MISA: なぜオーナーシップを売却しようと決意したのですか?
いい質問ですね。そうですね…。起業家として、また次に何か大きな事業をやりたいと思ったんですよね。起業家って、あらゆるチャンスを見逃さず、どんなチャンスであれ、や挑戦したいと思う気持ちが芽生えるんですよね。
私が起業家としてのキャリアを始めた時は、環境保護の観点からでした。気候やエネルギー問題、エコ・フレンドリーな化学薬品会社…。そして、今もまたこの分野に戻りたいと思っています。だれかの事業をコンサルタントとして手助けするようなことを考えてはいるものの、たぶん起業家としてこの分野で事業をすることに立ち返りたいと思っています。炭素捕捉や水素経済のことも絡めて、いつでもチャンスがないと考えてしまうんですよね。こういうことって、自分のレガシー(遺産)として残ると思いますし。
MISA: Kaleoが、環境保護主義者なのですね。
ええ、環境保護主義者ですね。
MISA: 会社を売却したのは会社が充分に成長したと思えたタイミングだったからですか?
そうですね。それから、昨年50歳になったんです。私にとってそれは大きな節目でした。このタイミングで、今後は何をやっていこうかということを考えました。
自分はまだまだ健康だし、若いと思っています。では「これから先の20年はどうする?」と考えていたんです。
最初の20〜30年で十分な知識や能力を身につけられたと思うので、それを使ってこれからの20年を最大限充実したものにしていきたいんです。
インタビューは、PART3へ続きます。